さすがに毎日は焼けない


こんにちは。卒論を焼きに来ました。

 

前回はみなさんにコメント等多くの反応をいただき非常に嬉しかったです。

こうして卒論を噛み砕いてブログの形にすることで、みなさんからの意見を受け取りやすくして、より分かりやすく面白い卒論が書ければと思って始めたものです。みなさんドシドシ突っ込んでください。よろしくお願いします。

 

今回はヴンターカンマーの紹介を、と思いましたがその前に少々、景徳鎮と徳化窯の比較をし
てみましょうか・・・。

前回、13世紀頃は景徳鎮が盛んになった時代で〜なんてことをお書きしたと思うのですが、あまり詳しくは触れませんでした。景徳鎮というのは有名なだけあって色々とありすぎるので怖すぎて避けちゃいました。ぺろ。とりあえず手元にある資料だけで比較させてください。

 まずこちら。はじめまして、徳化窯です。

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Brushwasher in the Form of a Three-legged Archaic Bronze Ding 鼎形筆洗

Ming dynasty,early 17th century

H.3 1/3in., W.3 3/8in., D.3 3/8in.

Ringlimg Museum of Art, the State Art Museum of Florida*1

鼎(かなえ)というのは古代中国で使われた鉄器の一つで、鉄の釜に三本の足が生えたものです。釜の部分にはうっすらと草花が線刻されているのが見えるでしょうか。ぽってりとした厚みのある形は乳白色の優しい色合いと相まってなんとも愛らしい表情を持っています。

 

 

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Vase of Gu Beaker Form 觚形壺

Ming dynasty, first half 17th century 

H.8 3/4in., W.5 1/2in., D.5 1/2in.

Ringlimg Museum of Art, the State Art Museum of Florida*2

こちらも徳化窯。觚と書いてさかずきと読み、これも古代中国の、お酒を入れる器です。こちらも少々厚めではありますが、しかしながらも洗練された雰囲気があるのは開いた口から高台(接地面のある部分)までの伸びが良いからでしょうか。2,30センチもあるとは思えない軽やかな曲線が重心を上へと持ち上げるいい形です。こちらも乳白色ですね。

 

乳白色、と言われましてもピンとこない方はトイレを思い浮かべるといいかもしれません。個人的にはトイレの便座や洗面器って綺麗な乳白色のイメージなのですが、どうでしょうかね。(そういえばトイレのTOTOって東洋陶器っていう旧社名からきてるんですよ、ほんでもって更に辿ると森村組という近現代日本のやきもの史を形作ったすごい人たちが見えてくるんですよ、なんて話はまたいつか。)

 

ではお次は景徳鎮を。

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景徳鎮

上:青白磁刻花牡丹唐草文吐魯瓶 一対

中国 北宋時代 景徳鎮窯

左:高15.1cm 右:高15.4cm 

出光美術館

下:青白磁瓜形瓶

中国 北宋時代 景徳鎮窯

高16.9cm

出光美術館*3

残念ながら景徳鎮の資料は青白磁しかなく・・・というのも、景徳鎮は北宋時代からペールブルーが美しい「青白磁」を生産しはじめ、そちらの方が白磁よりも名高いのです。

直接画像をお見せできなくて残念なのですが、景徳鎮の白磁は以下のリンクで見られます。

webarchives.tnm.jp

上のリンクは東博の画像検索です。これ、鼎形筆洗や觚形壺と同じ白磁なんですよ。不思議なくらい違いますよね。景徳鎮の白磁は一枚透き通ったヴェールを被せてしまったかのような、恐ろしく色気のある白なんです。たまらないですねぇ。興奮します。

 

一方で中国の白磁といえばこれ!って感じなのは定窯(ていよう)ですかね。

こちら〜。

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白磁長頸瓶

中国 金時代 定窯

高29.8cm

出光美術館*4

一番てっぺんの部分、口と呼ぶのですが、口から下のくびれまですっと伸びた首が美しい瓶です。口の開きから首、肩(ちょうど真ん中のくびれ部分)へと見事にスラーっとせんが伸びて、高く伸ばされた腕のように重心を持ち上げています。また一番下の短い筒部分を高台(こうだい)というのですが、そこから腰までの絶妙な持ち上がり方が、この瓶全体の色味をもったりとさせたままにしない、軽やかさを描き出している気がしてならないのです。しかし一方で、今度は肩から腰(お尻みたいに丸っとしてる次の曲線部分)へと、重くなりすぎないよう、少しだけ重心を下へさげて丸みを持たせることによって、独自の厚みを、肉感を生み出しています。この女性的な美しいフォルムに、もってりとしたアイボリーが重なり、今にも呼吸が感じられるかのような生命がここに存在するのです。いや〜たまらないですね。

 

とまあこんな感じで、白磁ってば色々ありますがみんな美人なんです。皆さんお好みの白磁は見つかりましたか?

私は定窯に一票ですね。全然卒論が焼けずに変なところが燃えはじめましたが、続きは次回。

お読みいただきありがとうございました。

 

〈参考文献〉

出光美術館『宋磁ー神秘のやきもの』2018年4月

John Ayers "Blanc De Chine -Divine Images In Porcelain" Art Media Resources,Ltd. 2002

*1:J.Ayersより引用

*2:J.Ayers

*3:出光美術館『宋磁ー神秘のやきもの』2018年4月より引用

*4:出光美術館『宋磁ー神秘のやきもの』2018年4月より引用